2021年3月4日木曜日

簡単! 什器、備品、設備、HP、雇用等への投資判断方法

 こんにちは、中小企業診断士の白井です。

 起業してビジネスをしていると、色々と新しい什器備品、設備を追加購入したり、HPを新しくしたくなったりしますよね。そんな時に悩むのが費用対効果。

「購入したい。けれども結構まとまったお金が出て行ってしまう。それに見合っただけのリターンが得られるだろか」このように迷うことは沢山あると思います。

 そんな時にどのような考え方で意思決定したらよいか?その方法をお伝えします。この方法はとても簡単であらゆる場面で応用が効きますので、ぜひ試して頂ければと思います。


 費用対効果を知るには、まず掛けた費用に対していくらのリターン(つまり収入)が得られれば良いか、を明らかにすることが大切です。その必要リターンをハッキリ掴めれば、それが実現出来そうもない話なのか、それとも実現できそうなのかが判断できます。

 ではどのように必要リターンを掴むのか?それは、発生する費用をあなたのビジネスの粗利益率で割り戻すだけです。

 計算式:発生費用÷粗利益率=発生費用回収売上高

 これだけです。これで費用回収に必要な売上高が出ますから、それ以上の売上高獲得を見込める投資だと判断できれば、前向きに購入を検討すればよいことになります。


 ある相談事例を紹介しましょう。飲食店事業者様から「あるポイントカードの加盟店になるべきかどうか」というご相談を頂いた事例です(数字は改変しています)。

 このポイントカードは、お客様が飲食したときにポイントカードを持っていれば飲食代をポイントとしてポイントカードに貯められる仕組みです。事業者がポイントカードの加盟店となれば、ポイントカードを持っているお客様を誘店できるようになり、来客増加が見込めるということです。お馴染みのシステムですね。

 さて、この加盟店となるための条件が次の通りでした。

 ・初期費用65,000円

 ・月費用(毎月発生)8,000円

 初期費用と月費用に分かれていますが、こういうのはシンプルに考えるのと良いです。まず月費用は年額換算します。

 すると8,000円×12ヶ月=年間96,000円ですね。

 初期費用は1年で回収できれば良いと考えると、

 1年で回収するべき総費用=初期費用65,000円+96,000円=161,000円

となります。

 次に、この161,000円を回収する売上高を、先述の計算式で計算します。この飲食店の粗利益率は70%です。すると次のようになります。

 発生費用回収売上高=161,000円÷70%=230,000円

※参考:粗利益率=(売上高ー食材費)÷売上高

 つまり1年間で23万円の追加売上を上げられると、1年で投資費用を回収できるということです。 


 でも、これだとまだ実現出来そうかのイメージが掴みにくいですよね。そこで、この23万円を客数換算してみます。これは23万円を平均客単価で割れば算出できます。この飲食店の客単価は850円でした。

 発生費用回収来店客数=230,000円÷850円=271人

 年間で追加で271人の来客があると、発生費用が回収できるということが分かりました。

 しかしこれでもまだイメージが掴めないかもしれません。そうしたら次はこれを12か月で割って月換算します。すると毎月23人の追加来客があればよい、ということが分かります。

 さらにこれを月の営業日数(この事業者様は25日)で割ると、1日当たりの追加来店客数は1人となります。

 つまり、ポイントカード加盟店になることで今の1日あたり平均来店客数プラス1人来て頂ければ、発生費用を1年で回収できるということになります。

 ただ、プラス1人だと発生費用を回収できるだけで利益増加には至りません(2年目以降は利益増加になりますが)。1年目から投資に対して利益を創出するなら、最低、現在の1日当たり平均来店客数プラス2人の来客を獲得できれば効果ありと判定できます。

 この事業者様は、ポイントカードを使うことで少なく見積もっても1日平均3人は来店数を増やせるだろうと判断し、導入に至りました。


 このように、まとまった費用が発生するポイント加盟、什器設備購入、HP改修、人材採用などを検討する際は、回収に必要な売上高をしっかり掴み、これを細分化して「日常の業務レベル」でイメージできるようにすることで、素早く納得感のある判断が出来るようになります。


 注意点としては、他に追加発生費用がないかどうかを調べる必要があることです。例えば人を採用する時には、人件費の他にも旅費交通費や研修費、制服代などの細々した費用も発生し、これが意外と馬鹿にならない金額だったりします。こういう付随する費用を洗い出してから計算することが必要です。


 一度やり方を覚えてしまえば色々な場面で使えますから、ぜひ試してみてください。格段に意思決定が素早くなるはずです。