2021年6月30日水曜日

事業計画をつくる意味

 こんにちは!中小企業診断士の白井です!本日は、「事業計画をつくる意味」について考えてみたいと思います。

 あきる野Bi@Staを何度かご利用くださった方は、相談員から「事業計画をキチンと作りましょう」と提案されたことがあると思います。事業計画とはその名の通り、事業の未来をどうしていこうと考えているかをまとめた計画です。事業計画を作るとなると「なんだか難しそうだな」「数字を考えるのは苦手」などと感じてしまう方も少なくないと思います。ただ、その点についてはあきる野Bi@Staの相談員が親切丁寧に教えてくれますので、アドバイスをもらいながら進めていけば、それほど大変なことではありません。

 計画の作り方よりむしろ大切なことは、事業計画をつくる意味や目的、果たす役割、活用のしかたを正しく知ることです。

 事業計画は事業を発展・成長させるために作るものです。資金の調達が必要な場合は必ず事業計画が必要です。設備投資が必要なビジネスをお考えの場合は、事業計画がないと資金調達は難しいでしょう。しかし、事業計画は資金調達のためだけに作るものではありません。“資金調達に有利な事業計画策定”なるものがあるようですが、このような考え方は目的と手段を取り違えていると言わざるを得ません。事業計画策定の目的は事業を成功させることです。資金調達とはその手段であり目的ではありません。この辺りは間違えのないように認識しておきたいところです。

 さて、事業計画策定には本来もっと重要な役割があります。それは、創業者であるあなた自身を成長させる、という役割です。

 事業計画をつくるには、市場を知り、自分自身を知り、お客様を知り、ライバルを知らなければ書くことが出来ません。つまり事業計画の策定に真面目に取り組むことで、自分のやりたいビジネスについて深く熟慮することになるのです。自分の足で調べたこと、自分の内側から湧いて出てきた想いを自分自身の言葉で書くからこそ、血の通った生きた計画書となります。生きた計画書は自分自身の決意をより強固なものにします。そして困難に遭遇したり道に迷った時に、マイルストーンとなって自分の立ち位置ややらねばならないことを知らせてくれます。

 また、事業計画には上記を言語化した理念・経営方針・取り組みのほかに、数字計画が盛り込まれます。なぜ数値計画が必要なんだと思いますか?

 1つは、自分や事業が生き残っていくための必達収益がいくらなのかを明らかにするためです。事業は資金が詰まってしまったときに終了します。創業時は、まず自分が最低限の日常生活をするためにいくらの手元現預金を稼がねばならないかを明らかにしましょう。この額面が当面確保しなければならないお金です。このお金をベースにして、これを実現するための必要利益、許容費用、粗付加価値、売上高を計算していきます。

 数値計画が必要なもう1つの理由は、”事業活動とは経済活動であり、事業の目的の1つは数字を作ることだから”です。経済とは数字の世界です。つまり、事業活動とはモノをつくったり売買してお客様に貢献する活動であると同時に、”数字を作る活動”という側面があるのです。商売をやった結果として数字が生まれるのではなく、数字を生み出すことは事業の目的の一つと捉えることが大切です。実現したい事業規模、残したい利益、従業員の処遇は全て数字で表されます。あなたが実現したいと思っている夢・サービスの質量・事業の大きさを”数字”という経済価値に置き換えることで、目標と実現への道筋がハッキリと認識できるようになります。

 数字に対して苦手意識を持たれる創業者も多いですが、事業計画の数字を作る過程で、自然とビジネスに必要な数字力は身についてまいります。

 このように、事業計画をつくることで経営に必要な力や視点が自然と身につきます。大変な作業ではありますが、自身で作り上げた事業計画書には愛着がわき、何としてもこの計画を実現しよう、という気持ちになります。

 ぜひ、自分自身と向き合う気持ちで、事業計画策定に前向きに取り組んでいただきたいと思います。

2021年6月23日水曜日

集客のためのSNS活用で、最も重要なこと

  こんにちは、中小企業診断士の白井です!

 今日は、集客のためのSNSの活用ポイントを簡単にお話します。

 よく「SNSを使って集客をしたい」というご相談を頂きます。SNS全盛の時代、たしかにSNSは上手に活用すれば強力な集客ツールになります。書店に行けばSNSのビジネス活用の本がずらりと並んでいます。SNS集客を頑張りたい方は、ぜひその手の本を読み漁って頂くことをお勧めします。

 さて、今日はSNS活用において最も重要であることを1つお伝えします。色々なコツやツールの使い方がありますが、SNS集客において何よりも重要なこと、それは「継続すること」です。

 発信するべきコンテンツを、定期的に発信し続けることです。Instagram、Twitter、Facebook、YouTubeなど、あらゆるSNSツールを開設していても、ほとんど更新がなく、時々思い立ったようにセール案内が配信されるようなSNSって、消費者の立場からして魅力があるでしょうか?しかしSNSの相談をお受けしたときに実態を確認すると、このような運用をしているケースが大変多いのです。この状態ですと、新しい消費者があなたのSNSを発見する確率はかなり低くなります。なぜならSNSやブログなどのコンテンツは、蓄積されればされるほど注目度合いが高くなるような仕組みになっているからです。

 つまり、何を差し置いてもまず必要なことは、更新頻度を上げて投稿数を増やすという、量の追及をし続けることが重要です。この「し続ける」ということが大変難しいのです。なぜなら、はじめは何とか投稿出来ていても徐々に投稿ネタがなくなってしまったり、本業が忙しくなって更新に時間を掛けられなくなるからです。また、思った様な反応が得られないことで心が折れてしまう、というケースもあります。

 SNS集客を上手くやってらっしゃる方は、SNSの投稿を業務として捉え、計画に基づく運用を行っています。「毎日朝7時と昼12時にコンテンツを投稿し、金曜日に土日のセール案内を送る」というように、ルールを決めてその通りに運用し続けていらっしゃいます。

 ルールは効果を見極めつつ変えていくのが良いですが、まずは、テキストベースのSNSなら「毎日1コンテンツ投稿」と決めて愚直に運用することをお勧めします。毎日欠かさず、必ず1記事投稿するのです。

 しかし先程述べた通り、だんだん投稿ネタがなくなってきます。投稿ネタがなくなったらどうするか・・・投稿ネタを探しに行くのです。この考え方がSNS運用においては非常に重要です。投稿ネタがあるから投稿するのではなく、「投稿せねばならない期日が決まっているから投稿ネタを探す」という考え方を持つことが大切です。このような意識を持つと、自分の情報収集アンテナが高く張られるようになり。お客様をよく観察するようになり、仕事や身の回りで起きていることに敏感になります。情報感度が高まるわけです。普段は見過ごしてしまう様な変化に気が付くようになり、SNS活用だけでなく商品やサービス改善にも繋がります。

 またSNS運用を継続するに当たり、反応を得られないことで断念してはいけません。初めの1年は大した反応がないもの、とタカをくくって続けることが重要です。SNSを運用していると、すごい数のフォロワーがいる同業の存在が気になったりするものです。同業がどんなテクニックを使っているのかが気になったりすることもあると思いますが、同業と自社を比較してもあまり意味がありません。同業がいたら、投稿数を見てみて下さい。圧倒的に投稿量が多く、毎日継続的に発信し続けていることが分かると思います。

 SNS運用において最も難易度が高く、多くの方が失敗するのは「継続すること」です。SNSは普通の個人でも人気あるアカウントが沢山存在するため、誰もがそうできるような気がするのですが、その裏には更新の止まった屍の様なアカウントが膨大に存在している事実があるのです。芸能人や有名企業以外のアカウントで人気のあるアカウントは、例外なく膨大な量をこなしているのです。

 そして量の追及があってこそ、コンテンツの中身がブラッシュアップされていき、より集客力が磨かれていきます。

 他にもSNSならではのシェア機能を活用し、ターゲット顧客層に響くアカウントの投稿をシェアしたり、インフルエンサーとのコラボレーションを行ったり、SNS広告をターゲット顧客層に出稿したり、といったSNSならではの取り組みはあります。しかしこれらの取り組みも、定期的に頻度良く量をこなすことが重要なのは変わりません。

 ぜひ更新ルールを定めて、運用し続けることを意識して頂けたら、と思います。

 

2021年6月15日火曜日

6月ミニセミナー福祉事業の始め方

あきる野創業・就労・事業承継支援ステーションBi@Staです。
本日のミニセミナーはBi@Sta相談員の發知健太郎先生による「福祉事業の始め方」というテーマで5名の出席を得て実施しています。

ご自身も経営者である發知先生が実体験に基づく内容を踏まえながら、わかりやすくお伝えしました。

参加者もメモを取りながら真剣にお話を聞いていました。
参加者の本気度を感じる1時間半でした。


Bi@Staでは毎月1回ミニセミナーを実施しています。
次回は7月17日(土)「無料で始めるホームページ作成ハンズオンセミナー~基礎から応用まで~」です。
講師はBi@Sta相談員(土曜日担当)の藤田尚美先生です。
お問い合わせはBi@Sta(電話042-518-7778。mail:bista.akiruno@gmail.com
まで。


 

2021年6月2日水曜日

創業時に知っておきたい「事業の終焉」

創業時に知っておきたい「事業の終焉」

 こんにちは!中小企業診断士の白井です。

 今回は少し物騒なタイトルですが、創業時に知っておきたい「事業の終焉」というタイトルでお送りします。

 感染症拡大により企業の業績が大きく影響を受けたことから、コロナ倒産という言葉が聞かれて久しい昨今。創業者、あるいは創業希望者も企業の倒産について考えることが増えたのではないでしょうか。

 ところで、倒産とはどのような状態を指す言葉かご存知でしょうか?「破産(会社がなくなる)」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、会社が消滅せず存続するケースも「倒産」という用語でくくられることがあります。「民事再生法」や「会社更生法」を適用した企業です。これらの法律は利害関係者の支援を得ながら会社を再建していく枠組みで、適用を申し立てた企業は消滅せず再建計画に基づく事業経営を続けていきます。

 このように倒産と言っても色々な形があるのですが、倒産とは、

「企業が債務の支払い不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態」を差します。つまりお金が底をつき、返済義務(支払金額、支払い時期)を果たせない状態になることです。

 私は最近、ライフワークとまではいかないですが「倒産」について色々な書籍や資料を読み解いています。何事も始まりがあれば終わりがあるわけで、それは企業も例外ではありません。企業がどのようにしてその生涯を終えるのかを知ることで、あるべき企業経営の姿が浮き彫りになるのではないか、と思っています。

 実際に倒産事例を調べてみると、倒産企業には共通点の多いことが分かります。成功事例には数多の要因が絡んでおり、共通点を見出すのは難しいですが、倒産事例は数種類の類型に大別できます。この倒産の要因をしっかり押さえることは、創業者や創業希望者にとって意義あることだと思います。

 それでは企業が倒産に至る主たる理由について解説していきます。

企業が倒産する要因

倒産理由①どんぶり勘定経営

 多くの倒産事例で目に付くのが、会計や資金管理がずさんで会社の資金実態が掴めていないという状態です。リターンの計算もせずに大規模な設備投資を繰り返す、運転資金がいくらなのか知らない、支出額及び支払い時期が分からないといった具合です。経理しか財務状況を把握しておらず、その経理もなぜお金が不足するのか原因が分からない。。この状態で資金が回る方が不思議と言わざるをえません。取引先の倒産に伴う連鎖倒産も、ずさんな数値管理に端を発しています。

 創業当時は営業やオペレーションなどで忙しくなります。もちろん大変重要な仕事ですから、これに注力すること自体は否定しません。しかしそれでも、創業当初の取引量が少ない間に、創業者自ら経理業務をやってみることをお勧めします。知識が不足していたら、ぜひビスタ相談窓口やセミナーを活用して頂きたいと思います。

 大変有能でバイタリティあるアイデアマンの経営者が、会計や資金管理への無頓着さ、知識のなさから無謀な猪突猛進経営を進めてしまい、気が付いた時には火の車になっているケースは大変多いのです。売上や利益が増加しているにもかかわらず資金が枯渇する「黒字倒産」は、倒産件数の約半数を占めています。世の中に価値を提供する意気込みと気概とセンスを持つ経営者の会社があっけなく倒産してしまうのは、この会計や資金管理への無頓着さからくるどんぶり勘定経営にあります。会計や資金管理は経理の仕事ではありません。もちろん記帳実務は経理がやれば良いですが、その中身やお金の動きを把握し適切な経営判断を下すのは経営者の仕事です。

倒産理由②急激な事業拡大

 ①とも関連しますが、会社の体力や資金繰り状況を把握せずに、ひたすら売上向上をめざして急速な多店舗展開や設備投資を行うと、資金需要が増加します。出店費用や運転資金が増加するのは勿論ですが、忘れられがちなのは法人税の増加です。いきなり利益が増加すると前年の予定納税が少ないために一気に法人税負担が増えることになります。反対に、出店したのに赤字店舗が多ければ資金の原資が稼げないわけですから、これも資金繰りを圧迫します。

 実は事業を拡大する時にこそ資金管理が重要になります。拡大すれば売上高は伸びますので絶好調な感じがするのですが、「資金」も同じように絶好調とは限りません。多くの場合資金面はそれまでのバランスが崩れ(借入金や在庫が増加する等)不安定になります。そんなときに何か大きな外部環境変化があると、突如売上や利益がダメージを受け、支払い負担が重くなるということになります。

 創業後に事業が軌道に乗ると、拡大を目指す局面に差し掛かります。拡大そのものは大変意義のあることです。しかし無謀で性急な業務拡大には資金面のリスクが大きいことを認識しましょう。拡大に向けた事業計画に基づいて戦略・資金の両面から経営判断を下す必要があります。

倒産理由③環境変化への適応を怠った

 社会環境や顧客の消費行動やテクノロジーは変化し続けます。まさにコロナ拡大は大きな環境変化と言えます。消費に限らず様々な活動がオンラインに置き換えられ、人との接触や外出を伴う消費は抑制され、代わりにおうち需要が伸長しました。

 東京商工リサーチが、100年以上続く老舗企業に幾度となく訪れた経営危機を脱してきた秘訣をアンケートしたところ、目立った回答は「業態転換」と「主力商品サービスの転換」だったそうです。環境変化に合わせ、自社の事業そのものを作り替えていくプロセスをやり続けてきた会社が生き残っているのです。

 創業希望者の中でも人気のある飲食業は、コロナの影響で大打撃を受けました。昨年は都内の日本食チェーン店の倒産があり、これに関連した業者の倒産も発生しました。

 しかしテイクアウトやデリバリー、食材の販売、キッチンカー出店など様々な提供形態が生まれたのも事実です。環境変化に適応することで売上高を確保するばかりでなく、事業が新たな能力を獲得していく機会にもなります。 売り物、売り方、売り先を時代に合わせて工夫し続けることが重要です。またこれらの取り組みは常に「トライ&エラー」「やり続ける」ことが大切です。販売活動に特効薬はありません。やるべき重要事項を定め、これを根気よくやり続けなければ、販売の成果は中々出ないものです。

倒産理由④社内統制の崩壊

 倒産企業には、役員同士の不和や社員との不和、行き過ぎた派閥争い、着服や横領といった内部統制の崩壊を招いている企業が多いです。役員が頻繁に入れ替わったり、社員が一斉退職する、ストライキする、内部告発などの兆候が表れます。

 複数人で共同創業する際は、お互いに腹の内を割って話し合い、十分納得のいく方針を固めてから創業して頂くことが望ましいです。創業前よりも創業後の方がよほど大変です。創業後、思い通りに事業が進むことなどまずありません。創業前の希望に満ち溢れた状況と、厳しい経営環境に立たされた状況では、同じ人間でも考え方と言動が全く異なるものです。

 平時に仲が良いから、という理由で共同創業することはお勧めできません。お互いがビジョンを共有し、苦難を乗り切れる同志であるかどうかを何度も確認するべきでしょう。


 本日は、倒産という企業の終焉から創業者が知っておくべき教訓を解説してみました。是非参考にしていただければと思います。