2020年12月22日火曜日

やらないことを決める

  こんにちは、中小企業診断士の白井です。本日は「やらないことを決める」というテーマでお話をしたいと思います。

 創業前、創業後に関わらず、事業主は自分のありたい姿、事業の目的、自分のウリを見つけるために徹底的に自分自身と向き合うことになります。この過程で「あれもこれもやりたい」状態になったり、反対に「自分はどうなりたいのか、何がしたいのか分からない」という状態になったり、とにかく頭の中は大混乱となります。日替わりランチのように毎日考えが変わることも決して珍しくないでしょう。

 理想像やウリを定義するのは大変難易度の高い思考ワークです。奥ゆかしさや謙虚さという美学を持つ日本人は特に苦手なのかもしれません。こんな時にお勧めなのが、発想の逆転です。つまり、

・「自分はこうありたい」ではなく「自分はこうあるべきではない」

・「これとこれをやりたい」ではなく「これとこれはやらない」

・「自分のウリはこれ」ではなく「自分の弱みはこれ」

というように、ありたくない姿、やりたくない事、弱みを整理するのです。もちろん紙とペンを使って書き出してくださいね。実際にやって頂くと分かりますが、意外なほどスイスイ筆が進むと思います。そしてある程度書いてみたら、全体をざっと見直してみてください。書かれた文字の裏側に、あなたのありたい姿、成し遂げたいこと、強みが見え隠れしていませんか?

 このような「切り捨て思考」は、自分が本当に注力したいことに気が付かせてくれます。それと同時に、やらないことを決めている人には「信念」が宿り、これが他にない「尖った魅力」になりうるのです。

 商品やお店の魅力を高めるには「ターゲット顧客像」を定めますが、これも「ターゲットでない顧客像」を書き出していくと、その反対側にターゲット顧客の人物像が浮かび上がります。

 書き出すときは、遠慮なくアクセル全開で「ありたくない姿、やりたくない事、弱いと思うこと」を書き出すことです。これらが多ければ多いほど、本当にあなたが大切にしていることが明確になります。

 起業について勉強されている方は「戦略」という言葉を耳にすると思います。戦略というと何かとても大がかりな策略のような感じがしますが、その本来の意味は至ってシンプルで、戦略とは「自社の目的を達成するために、資源をどこに投入するかを決める」ということです。経営資源(ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・時間)は有限です。まして起業当初の経営資源は質量ともに微々たるものしかありません。ただでさえ少ない資源を色々なところに分散させてしまえば何も成果が出ないことは明白です。

 この戦略を決めるということも、「切り捨て思考」で考えるのが有効です。つまり「リソースを投入する分野」ではなく「リソースを投入しない分野」を決めることで、リソースの投入分野が明確になるのです。

 「切り捨てる」というのは思った以上に勇気がいることです。普通の人ならば、

「可能性がゼロではないものを完全に捨て去るよりはストックしておきたい」とか、

「リスクヘッジのために保険を掛けておきたい」と考えるものです。

 しかし創業当初は、資源を分散させることのほうがよほどリスクが高いということを覚えておきましょう。なぜならビジネスには「顧客」の他に必ず「競合」が存在するからです。そして創業者は多くの場合、経営資源の面で競合に劣っています。競争の原理原則は一点集中主義にしたがい、全ての経営資源を1点に集中させて戦う集中戦略が基本です。

 以上、かなり話が広がってしまいましたが、本日は「やらないことを決める=切り捨て思考」についてお伝えしました。ご自身のあり方や事業のコンセプトについて迷ってらっしゃる方は、一度お試しくださいね。

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿